白いノートに捧げる巻頭詩/夏緑林
 
寄り添いあう小鳥たちは 
手を繋がない 
重なりあうヒトデたちは 
手を繋がない
罵りあうイランとイスラエルは
手を繋がない 
売り込みあうキリンとアサヒは
手を繋がない 
音楽と政治が
手を繋ぐのは聴くに堪えない 
現代詩と物理が
手を繋いでも様にならない


だとして


幼児を連れた母親は 
手を繋がずにはいられない
水分子は他の分子と
手を繋がずにはいられない
等高線は地図上のどこかで
手を繋がずにはいられない

はずだと思っている
きみが

つないだ手 
握り返す力と力
交錯する視線の彼方にあるのは
目標
であったり末路
であったり絶頂
であったり爆発
であったりしながらどこまでも
続いてゆくどこまでも続いてゆくどこまでもだ
細石の堆積がゴルジュを埋めて
巌となりて
苔の生すまで



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