思い/瀬崎 虎彦
 
誰かのいいわすれたことが
潮風の強い晩に
白い光となって残り
ああ、これは人間ではないな、と思った

街灯のしたで未練がましく
とどまるものは
人間の心のうちからはみでた
恨みがましい思慕なのだった

思いを殺すことは出来ないが
殺せぬほど強い思いを抱く事の
危険は理解できるつもりだ

ぼくはなだめるでもなく
なぐさめるでもなく
見て見ぬふりをして家に入った
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