白い観覧車/乱太郎
彼岸花
山の奥には残雪が
今日の風はやけに冷たく
ここにひとり
港
大型客船が停泊している
遠くには高層ホテル
約束の時刻
最後だからと言って
汽笛が鳴った
かもめが持ち去っていったのだろうか
時計の針が動こうともしない
待ち合わせの観覧車の入り口
二十歳そこそこの男女が
はしゃぎながら乗り込んでいく
右回りの観覧車
時計と同じ方向に
空を掴んでみようと思った
初めて
ここにふたり
彼はいつもと同じ笑顔
急かされるように話しまくる
二人で飲んだワイン
二人で歩いた公園
二人で眺めた
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