天秤/心海の旅人
 
分銅を摘んだ指は震えている
水風船のような天秤の前で
ただ指は小刻みに震えている

いくつの恒星と惑星と衛星が死に
そして生まれていったのだろう
まだ指は震えている

蝶の一匹でも止まろうものなら
天秤の細い両腕は虚しくも
パチンと上下に割れてしまうだろう
だから指は震えている

分銅を右に乗せれば左の皿が弾け
分銅を左に乗せれば右の皿が弾け
きっと元には戻せないのだ
傾きを怖れる臆病者は震えている
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