春の手記/ミネ
腐敗したものの中から立ち上がる春が臭う
ねじれながらクロトンの葉がまだらに燃え
枝の根元に寄生した洋ランも
咲くのを待ちわびるように根を伸ばし続ける
雨が降ればミミズがあわあわと這い
家の白い壁はますます黒ずむ
季節は折り返し
人を連れてきては連れ去っていく
隠すわけでも奪うわけでもなく
運命のようにただ手をにぎって
いつになく青々としながら
清純な新しい香りをまとい
今年も季節が空をよじのぼる
その下でわたしたちは
ひっそりと接吻をする
崩れおちる雲や太陽をささえて
イソヒヨドリが執拗に鳩を攻撃し
間の抜けた風が通りぬける
墓やトタンの上にはびこる朝顔をまねて
死臭の中からあふれだす春が見える
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