金色かたつむり/灰泥軽茶
大学生ぐらいの小さな女の子が
自分と同じぐらいの大きさの
真っ赤なケースで
たぶん中身はそうであろう
金管楽器を背負って
のしのしと前から歩いてくる
普段は金ぴかの心地良いねぐらで
体を半分うずめて寝起きしているのかしらと
ぼうっと眺めていたら
女の子は
はにかんで嬉しそうな
口のはしから音符がこぼれ落ちそうな
笑みを見せながら通り過ぎていったので
振り返ると
真っ赤なケースがひとりで上下に揺れて
もごもごとこもりながらも
心地良い響きが聴こえてきた
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