水底/伊月りさ
きみを
たいせつにされていない時間をくべて
かなしい町にしよう
はじまりしかない町
わたしが保証されるほど
糸が切れていくようなので
まちがったままでいいのです、
すばらしいままでいい
のです、なにも
伝えないでください、
平たく、小さい、
覚束ない摩擦や 時に、熟(こな)れた反動で
みなもをはねるときにだけ
晴れている空
晴れるほど
みえなくなるから
きれいにみえるだけなのに
だれもが視神経を洗い続けている
ねぇ わたしたち いつまで川を歩くの、
と 流されそうになる手をひいて
子宮におりていく
きみのこ
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