まぼろし/乱太郎
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あなたはいままでどこに
問いかける言葉ひとつひとつが
まだらに染まる紅葉となって落ちていった
見上げる空では雲が走り去る
突然の携帯電話の着信音
わたしはここです
あなたのいたずらな声が聴こえる
ここにいて
そして遥か向こうに
遠くにあって
すぐそばにいるあなた
これからどこに
まぼろしのあなたの影を探す
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