濡れ衣/日野
 
差し出された濡れ衣を
貴方は静かに纏った
濡れ衣は貴方に張り付き
体軸を浮かび上がらせ
その様子を見て
貴方は静かに笑った

菊日和の空の下
貴方は濡れ衣を濡れ衣とせず
その場を後にした
その背中は自由であった
この先沛然の雨に打たれようとも
貴方は駆け抜けるだろう
古ぼけた帽子に手をやり
ああ大変な雨だと笑いながら
楽しそうに表を駆け抜けるだろう
貴方は自由だ

夏雲重なる日照りの日
わたしは羊腸の小道で
必ず貴方に出会うだろう
石畳に黒い影を落とし
干からびた小本を手にし
貴方は
ああ君ですかと
笑うのだ

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