未完詩/桐原 真
 
失う/失われることについて
あるいは、
手付かずの真夜中の数え方について

「いずれにしても、
ものさしは秒針だけだよ」
と、あなたは言った


頬をすくうような風もまた、
朗らかな影のような過去となる
今は
春先の午後



(とびらを少しだけ開け放していたのは、
誰だったのでしょうか)



でも
ほんとうは、あなた
名前など持っていなかったんでしょう?





ときどき、
空っぽの波音が
笑っているのね


ここは角部屋
南西からの日射しのなかで
すっかり浮腫んだあたたかな手を
きゅっと握っている


(あな
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