生まれたばかりの光/いねむり猫
どこまでもまっすぐな道が
枯れた牧草の なだらかな丘を超え
ふと消えていく その向こう
金色の輝きが 青い空からあふれ出している
あまりに荒々しい 産声
私の体は 透過されて 輪郭を失い
それでも錆びた自転車をこぎ続ける
楓の並木は 視界の外側で
明滅する奔流となり
激しい息遣いだけが耳に残る
だれもまだ到達していない 瞬間を
ただ空の輝く裂け目に向かって 走る
耳はもう 先端が溶け出してうしろへなびき
目は 輝く金貨にふさがれている
光はまだ 生まれたてで 何者にも届いてはいない
光は ずしりと重く 無限の質量を惜しげもなく投げ捨てながら
冷気の中で速度を上げる
青い宇宙より速い光
光より速い闇
光は 生まれながら 死を乗り越える
幼子と母の視線がぶつかり
歓喜の中で
宇宙が生まれるように
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