バレンタインデーの思い出/小川 葉
19歳の頃好きな人がいて、当時はまったくありえなかった逆チョコをあげようと思ったのであるが、やはり黒山の女子しかいないデパートのチョコレート売り場は恥ずかしく、そうしてついにとった行動が、24、5の見知らぬお姉さんだった。あの、男が女にチョコレートをあげることは、いかがでしょうか。
お姉さんはびっくりして、頬を赤く染めた。今思えばその意味がわからなかった。それに気づけないほど私は学校の同級生が好きで、まさかそのお姉さんを、私がナンパしたという意識さえなかったのである。
チョコレートをひとつ、買ってきていただけませんか?私はどうも恥ずかしいのです。あなたが好きなものでかま
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