スパイス/いねむり猫
異国の食べ物から立ち昇る
由来も行方も知らぬ物語
リズムがつかみきれない 不可思議な音楽に跳ねながら、
細密な砂嵐のように 体を包み込む芳香
風土と血に練りこまれて 分かつことができない 刺激と香り
遠く貿易船で運ばれた木の実と 今朝 裏庭で摘んできた若葉が
交じり合って この街の食卓を 揺るがないパターンに染める
街角にたむろしている男たちの きびしい表情と体臭が
街を覆い また刺激する
循環と拡散 集中と忘我
この国の空港に降り立った瞬間 肺から全身に浸入する濃密な気配
大地を煮詰めた苦味が 血液に忍び込む興奮
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