美香/「Y」
のとき、展示会場で見なかった?私のこと。私はずっとそこにいたんだけど」
俄には信じがたい話だった。
就活中の学生を集めた大規模なイベントの最中、人型ロボットのパビリオンで、彼女の姿を見た記憶がある。
「……ロボット?本当に?」
彼女はニヤリと笑い、頷く。
「ロボットとか言われるの、一番嫌なんだ」
美香、という名前だった。
パビリオンでの職務を放棄して、ここにやって来たらしい。
「バレンタインに男の人にチョコレートをあげるっていうのを、やってみたかったんだよね」
彼女はソファに腰掛け、はにかむような笑みを浮かべている。「あげるんだったら、あなただと、決めていたの」
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