眠らない街の眠らない人々/ブライアン
冷たい。橋を渡ると、川の流れる音がした。だがすぐに車の男のほうが強くなった。川の音が聞こえたのはわずかな時間だけだった。
国道を照らす橙色の光が夜に浮かんでいる。マンションの窓からこぼれる光は弱々しい。もう、みんな眠りにつこうとしていた。空気は透明よりも鈍色をしていて、汚く、酸っぱい。洗濯物は外に干したくないのよ、と主婦たちはいう。でもね、とせんべいをかじる。外に干さないと乾かないじゃない、と。
この国はよく雨が降る。でもコンクリートに囲まれた街では、すぐに乾いてしまう。乾いたアスファルトを車が走る。トラック、バス、タクシー。眠らない街の眠らない人々。誰もいなくなったとき、ラジオをつけるだろう。両手を真上に伸ばし、あくびをする。吸い込まれる空気は透明より鈍色をしていたとしても構わない。あくびで出た涙を乾かしてくれるのだから。
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