入江/
日野
あなたの死体が
打ちあがる入江に
とうとう春が流れ込む
めだかの大群が弧を描き
光と影の
無数のオウトツが
あなたへ向かう
あたたかい波にたゆたい
塩に溶け
無機質な瞳が
ぶれるように
にじむように
泣いている
声がきこえる
まるで音叉を浸したような
かすかな振動をもって
はるか遠くから
押し寄せる
その小さな手をとり
その小さな爪を
口に含んだら 固く
塩の味
なんとなまぬるい風だろう
ああ今だけは
今だけは
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