開眼、ひとときの和楽/木原東子
 


しかし
生きて増えて、知的生命体となっても
三苦を超越し得ない
何故にこの自分が
こうして生きなければならないのか
生命の定義すら疑う


60年かかってやっと意味の理解に辿り着いたある文

「人間の生きる意義は喜怒哀楽を感じることである
あるいは苦の中にもひと時の和と楽をたのしむことである」

よおし、ひとときの和と楽か
それを大切にしよう、ひとときくらいあるだろう


ああ、なんだか心が震え出した
それでいいのなら苦も苦にならないぞ

有り難い、Yとしておそまきながらの開眼
疲れたら死ぬことも
「やれやれやっと休める」と喜びであるかもしれない


ひともとのロウバイの色と香が
ここしばらくのよろよろの心に

ここだよ〜と呼びかけてくれた

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