供物/
水瀬游
彼女はこっそりと
自分の部屋のクローゼットの中で
自分だけの神様を祀っていた
一般に、である
神だとか 宗教だとかは
全く馬鹿馬鹿しい物で
馬鹿馬鹿しい物を本気で信じる人間は
奇異の目で見られる
という事を
彼女はよくわかっていた
その辺が私と、新興だかカルトだかとの違いよ、と思っている
自分が神様を信じていることはひた隠しにして
それでも彼女は信じている
教義は一つ
布教を行わないこと
クローゼットの中
大きな祭壇に備えられた供物は、まだ暖かい。
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