日記を捨てる/灰泥軽茶
 
私は小学生の高学年頃
毎日日記をつけていた
それは思い出や覚え書きを残すためではなく
日記をつけ続けることに固執していたからである
そして書いていることは
何かの情景描写や感情表現では全くなく
ただ単に朝ご飯のメニューを
書き連ね
誰誰と誰誰と誰誰とどこで何をして遊んだことしか
書き連ねることしかなく

誰かを好きとか嫌いとか
こんなことに悩んでいることなど
おくびにも出さずに
何かの報告書みたいな
これで私の毎日は大丈夫ですよと
自分を言い聞かせるような文章であった
と何十年も経ち
追い詰められ
作為的な自分を良しとしていたことに気づく

今その日記が残っていればよかったのだが
十代の後半
表紙を見るだけで嫌悪感を感じ
破り捨ててしまった

ゴミ箱に散らばる
変わり映えのしない
書き連ねた朝ご飯のメニューが
脳裏に焼き付いている




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