隊列/HAL
徐々に光が失われゆく
恒星の情報を送るのを辞めなかった
繰り返し繰り返し人類に送り続けた
その途中で多くの他の生命体の星から
打ち上げられた人工衛星がその死滅する
光が薄くなっていく恒星の軌道を周り続けていた
その中でもっとも優れた叡智によって
創られた人工衛星が軌道から外れ
違う方向へと向かいはじめた
人類の創った人工衛星も
またその他の数え切れない人工衛星も
先頭を切った人工衛星の後を追い始めた
まるで海洋を越えて次なる陸地を目指す鳥が
隊列を組んで飛んでいくかのように
先頭を切った人工衛星はこの宇宙ではない
次なる宇宙に輝く恒星を感知していた
その美しい隊列はあたかも希望を描くように
読むぼくにもその隊列が見え物語は終わる
誰か知らないか
そのSF短編小説を
ぼくはずっとネットも含めて
あらゆる図書館も訪ね捜したけれど
ぼくの希望を打ち砕くように
その物語は忘れ去られていた
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