夜明けには死が待っている/士狼(銀)
 


これで終わりだ
哀しみの淵に佇んで
棺桶に片足を入れてみる
そこは冷んやりとしていて
おそらく恋しいとか愛しいとかいう
奥底から生まれるそういった波に襲われて
目覚める前の君の体温を思い出す
こどものように
温かな
泣いてしまいそうな程の幸せを
だからこの夜だけは
手放せない
終わらせたくない
太陽を黒い泥濘に沈めて
世界を凍結させてしまいたい
それでも
いくら烏を殺しても
夜は深くならなかった
朝が君を起こす前に
死んでしまいたかったのに
夜明けにはいつも通りの
ポーカーフェイスを貼り付けて
ひとこと君に預けたら
この幸せを殺さなければならない













「さよなら。」
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