夜行/HAL
柔和な目線でぼくを歓迎するかのよう
ぼくもひとりひとりに微かな笑みを返す
そしてゆっくりと一両だけの列車は動きだす
ぼくは車内の暖かさにも安堵を憶えながら
切符に記載された席を見つけ
そこにゆっくりと腰を落ち着けた
隣の席にはだれも座ってはいなかった
窓の露を拭いて外を見てみたら
その外には星々が瞬き眼を下にやると
知らない街の灯りらしきものだけが見えた
ぼくは確信していた
ぼくは間違ってはいなかったと
ぼくの乗るべき列車に乗ったんだと
ぼくの乗るべき列車はこれだったと
線路を走る音は聞こえてはこなかった
列車は天空に向かい夜空の中に溶け込んでいくのが分かった
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