夜の通勤急行列車/灰泥軽茶
 
夜の通勤急行列車

ゆっくりだんだん蛇行しながら

「プシュー」と

最後に息を吐き出して一時停車

車掌さんのクネル声でどうやら信号待ち

皆も疲れて

「プシュー」と

息を吐き出し

無言の虚空を眺めている

ただつり革につかまって手を揺らすおじさんの

開いたジャンパーのジッパーの

かちゃかちゃ鳴る音だけが

なにやらせわしげに笑っている

ポツンと夜空に列車は動く気配はなし

皆の顔はなんだか粘土細工のように乾燥してきた

着ている服もなんだか紙のようだ

そういうわたしも体の中身はとっくに出されて

ハリボテ化された
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