winter loser/木屋 亞万
冬の朝
空気が張り詰めている
これから僕は試される
あたたかい布団から出て
ぬくもりの残る寝間着を脱ぐ
つめたいシャツに腕を通す
小さなボタンが凍りついて
うまく動かない
冷え切ったズボンが太股にあたる
ホックとチャックがひやりと腹に
ベルトのバックルも加勢してくるので
腹を凹ませてしのぐ
体温を奪われるのは
最初の少しの間だけ
がまんだ我慢するのだ
家を出ると
夜のうちに地表に溜まった澄んだ空気が
北風と太陽にかき混ぜられながら
朝の街にきらきらと沈殿している
朝の交差点は
おだやかな陽射しの中で
まぶしく光の透明度を増してい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)