winter loser/木屋 亞万
 

冬の朝
空気が張り詰めている
これから僕は試される

あたたかい布団から出て
ぬくもりの残る寝間着を脱ぐ

つめたいシャツに腕を通す
小さなボタンが凍りついて
うまく動かない

冷え切ったズボンが太股にあたる
ホックとチャックがひやりと腹に
ベルトのバックルも加勢してくるので
腹を凹ませてしのぐ

体温を奪われるのは
最初の少しの間だけ
がまんだ我慢するのだ

家を出ると
夜のうちに地表に溜まった澄んだ空気が
北風と太陽にかき混ぜられながら
朝の街にきらきらと沈殿している

朝の交差点は
おだやかな陽射しの中で
まぶしく光の透明度を増してい
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