あひるの呪い/umineko
他人に迷惑をかけないように
生きていきなさいって母は言った
幼いあひるの行列が
刷り込まれていくように
あなたは
もう気付いているとは思うけど
愛するということは
誰かを傷つけることだから
わたしは慎重に言葉を選ぶ
うつむいてやりすごす
おかげで入り江はとても静かだ
一日が終わる
誰か
あひるの呪縛から
わたしを
解いてくれますか
自由は 孤独
わかってる
怖くないわけじゃないけれど
わたしはひとりで生きていくのがとても好きです
わたしは誰かと寄り添いながら生きていくのが好きです
わたしはあなたのことを思い出すのが得意です
わたしは
いくつかの事実から目をそらすのがとても好き
地下鉄のホームに降りて
出口を
確かめることもなく
ただ足早に歩いてく
そんな昨日を
あなたを傷つけて
それもいいかな
あなたと傷ついて
それだっていい
あなたと
同じ方角に
ホームを降りて
歩く
歩こう
他人に迷惑をかけないように
生きていきなさいって母は言った
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