看板娘/灰泥軽茶
それはかつて多くの人々を魅了していたに違いない
それがいまやすっかりおんぼろのおんぼろり
はじっこは剥がれ落ち
赤茶けた錆びが一面に飛び火して
壊れかけた壁の残骸の一部のようでしかない
でもしかし彼女はにっこり笑っている
空々しいなんて承知の上で
その時代の空気をいっぱいに吸い込んで
にっこり笑っている
街を歩く人は気づくこともなく
それが昔は何を営んでいたのかわからない
あばらやで
彼女は毎日さぁさぁ今日も元気で一日
活気をつけてくださいよと
言わんばかりの笑顔を向けている
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