彼の名残り/HAL
ひとはいつ自分の間違いに気づくのだろう
だれかが去っていってしまったときなのか
深夜に目醒め眠れぬ夜を過ごすときなのか
満員電車で家畜の様だと想ったときなのか
あなたはそれに気づいたことはないか
自分は間違えてないと信じているのか
ぼくの方がおかしいと感じてしまうか
どうせ考えても遣り直しは利かないのに
時計は逆には廻らないと知らぬ馬鹿だと
徒労を為して何になるかとぼくを詰るか
友には長く一緒に歩いてきた連れ合いがいる
連れ合いを亡くした友にも愛娘が一緒にいる
ぼくは一度も結婚することもなく
六十歳を越えたひとを知っている
ある日ぼくを訪ねて事務
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