/
 
を止めようとさえしなかった。かの女もまた、わかっていたのだと思う。
 わたしたちはしばらく無言のまま歩き続けた。由美子は無表情のまま足元をずっと眺めている。土気色の爪がつうっ、と光った。
 もうすぐ着くだろう、と事前に知らされていたので、わたしはそろそろ動きにくくなってきた足を休ませるつもりで、また歩みを緩めた。コンクリートの床と自分の足が、なにか繋がりを増していくような心地だった。

 ふと、蛍光灯が完全に消えた。わたしも由美子も無言のままだった。パイプの中を流れるものの駆動音とふたつの裸足の足音だけが、光の静謐の中に残響し続けている。
戻る   Point(0)