Deracine/HAL
ない眼をした男や女が
溜め息の替わりに死臭のする会話を交わす
そして淋しさを埋めようと
快楽に似た性交をする
いつか陽が昇り始めたら
顔を洗いに行った女の その鏡に映る骸骨の素顔
出社のために定期を確かめ駅へと急ぐ
そのプラットホームに立った時
錆ついた何処にも運んでくれないレールを見る
やがて満員電車が入ってくる
駅員が電車にご注意をと感情のないアナウンスをする
それを聞きながら 物のようなその男は理由もなく飛び込む
ジ・エンド それで不幸がひとつこの世から削除される
駅員は その男の肉片を片づける面倒に作業に
うんざりとした思いを抱くだけ
電車を待っていた乗客達は電車に遅れることに
またかとすぐに忘れる怒りを抱き携帯で会社に知らせるだけ
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