おはなし、森の/石瀬琳々
 
たぶん、枯葉を踏んで
(小気味良いステップで)
たぶん、あなたの森を歩く


あなたの匂いがする森は
いつかどこかで歩いた道
頬を寄せると風が囁く


おはなしをしよう
ブランケットにくるまって
あるいは樹木の梢を透かし
仰ぎ見る青い空


おはなしをしよう
わたしだけが知っている花
あなたがいつか差し出した花を
こうして髪に飾って胸に抱いて


 雪が降る 瞳に雪が降る
 瞳のおくの隠された湖面に触れて
 アイシテル アイシテル
 つぶやいては溶ける真冬の花の


笑っているような
(泣いているような)
そして陽射しがこぼれて明るい


あなたのいとしい森を歩く、歩く
たぶん、わたしを待っている
いつかどこかに続いている道



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