前を見て/加藤
望みが持てなくなって
ひとつの灯りも灯せない
そういう夜にその日は思えた
雨が降り出している
耳をすまし
黒い地面がまるで現実に見ているようにはっきりと見えるね
もう二時になった
枕元の時計が
なんだか無機質に立っているね
思い出ばかり色付きだった
思い出は 今この時を象徴し映し出す
諦めることは 変わることより 難しく
考えられる余裕さえ 私にはなかった
きっとそうだった そういうことだった
そう言って 全部過去形にしていた
だけど
繋がりはいろんな所にあって
引っ張り出せば全部自分の人生になった
そうしてその全部を持つのは無理なことだった
歩くたびにこぼれてしまって
一度でも振り返ったら行けないから
前を見た
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