生殖と発生/佐藤章子
あのね、正しい空はいつだって
きっと明日は暑いから動けない
たとえば夜からうまれた一瞬ならば
細胞の色にそって
私は彼女を嘘つきだと言う
線上にならぶ
黒いすきまからみえる手を
緑色に隠してほしいと
何度もゆらして
少しずつ分化した声も
あの扉へと混ざりながら続いている
もうすぐに消えてしまう靴の置場を
探すこともなく
膨らむ指先を正面に
君の形のまま汲みとってゆこう
うなずいた速度にそって
ふせ目がちに笑うよう
私は言葉を嘔吐した
きれい、なんて言わないで
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