スワンボート/灰泥軽茶
もやいがほどけて
岸からゆっくり離れ惰性ですすむスワンボート
寂れた観光地の人工湖は静かでのっぺりしている
スワンボートは誰も乗っていないんだったら
おひまをいただき
ペダルを
キイココキイコ
キイココキイコ
どこまでも高く飛んでいき
美しい景色を眺めながら遠くへ飛んでいきたいなと想う
そんなことは叶うはずはないんだけれど
とっくに自分はプラスチックでできた偽物だと
気づいているけれど今日は誰も乗っていないから
軽くて軽くてちょっとした風が吹けば
プラスチックな翼をはためかせ
渡り鳥になれるかもしれないと想う
それにしてもそろそろ仲間の元へ帰りたいものだ
誰も来る気配もなければボートの管理人は
春までは来ないだろう
やれやれと気まぐれな風にあっちへとこっちへと
人工湖を彷徨うスワンボートは
無言の冬を越していく
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