十八歳の犬/榊 慧
。逃げられない。誰も俺を逃がすことは出来ないし、俺が逃げたいと思っても逃げることは不可能なものらしい。らしい、と、俺は思っている。人も、そう思っている。人は、生来マゾヒストだ。
夜、暗い、細い道を彷徨った。倒れた。民家は動かなかった。民家が続いていた。駅の近く、夜の商店街の客のいない居酒屋、店員に挨拶された、俺は薄いパジャマで裸足だった、冷たかった、真冬だった。「何だったんだろうね」酒を吐くほど飲みたい。
タバコの葉を食べなかった。食べようと思っていた。いつでも食べれるようにしている。
蒸留酒を吐くほど飲みたい。十五歳のとき飲んだ高そうな日本酒は癖が無かったように思う、酎ハイ
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