無情/砂木
紫色に染まった指では帰れない
道草をした通学道路 道沿いにある桑の実
よその家の前にある 小さな紫の甘い実
小学一年の私達は つぶつぶをぱくりと楽しんで
親にばれないように 反対側にある川で
指についた 紫の果汁を洗おうとした
低い足場にしゃがんで 水に手を伸ばすと
ランドセルが首の後ろに滑って後頭部を押した
どぼん
ゆっくりと確実に 私は川岸から離れる
近くに居た友達が 眼を見張って見ている
手を伸ばしたが 流され 水の中にひきずりこまれた
汚い水の中 眼を開けたまま
くるくると 洗濯物のように回った
恐怖とか 考える暇もなかった
ただ ふっと 頭が水
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