咲く/佐藤章子
私が押しだした靴の跡に
ごめんねはぬぐえなくて
ゆっくりと連なる六文字の立体は
藍色をくり返しながら君の姿勢を正し
私は文字数を埋めることが出来ず
些細なことだと赤色の呼吸をふさいで
君の写生を始めた。
明日、嘘に流れるのなら
言葉でつなぐ顔色を洗わないように、と
反芻する声を一枚ずつ思いだして
はじまりの終わりを重ねて
さしだした手のひらへ
私のぬけがらが固まってゆくように見え
君の指先を放れたとしても
まぶたの空で浮かぶ歌はいつまでも泳いでいる。
君が受けいれた縁どりの跡を
暗がりの太陽は足ぶみ笑って
やわらかな雪に告げた指きりは
温かな光の中に咲いた
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