遠雷/
津久井駒彦
とぎれと
ぎれ
に
雷鳴だけが聞こえている
僕は待っているのだが
あの低く垂れこめた質感が
全ての都市を破壊しながら
こちらに進軍して来るのを
そのときこの温かい雑踏は
どんなふうに散り散りになるだろう
どんなふうに愛が敗北し
勇気が挫折し
希望が絶たれるのだろうか
あなたには聞こえないのか
僕にはもう雷鳴しか聞こえていない
ああ来るぞ
日常が
やって来る
僕は雷鳴だけを聞いている
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