プライスレス/折口也
 
思い出はお金では買えない
そんなの嘘だね
君と異国での思い出が欲しかった僕は
うどんをすすりながら
旅番組を見て羨んでいるこの夜に

愛情はお金では示されない
そんなの嘘だね
言葉だけじゃこの指輪の広告で
折りあげた紙飛行機のように
風に流されて気持ちは頼り無く飛んでゆく

尊いものはお金では買えない
そんなの嘘だね
月の土地だって所有しようとする
無粋な時代に
全てが商品として溢れている

お金で買えないものがある
あるとするなら
どこかで買ってきたわけじゃない
自分自身の存在か
夜にうどんをすする一人の非売品

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