昼/渡邉建志
 
奥さま。少しはやすぎですと
クロオデルが言う。
ミセスブロンは手を止めてつと立ち上がり 
黒猫を撫でる。ピアノの上の猫の名はプチロコ。  
クロオデルは知っている。
プチロコはのどしたを撫でられるのがすきだということを。
ミセスブロンはプチロコののどしたの感触が好きだということを。 
案の定ミセスブロンはプチロコののどしたをすらりと撫でる。 
ミセスブロンの横顔をクロオデルは盗み見る。 
奥さまこのようにと ワルツを弾きはじめると 
プチロコがおどろいてピアノの上から飛びのき 
ミセスブロンはクロオデルの手を見つめる。
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