そんな耳鳴り/吉岡ペペロ
ひとりでできることなんかなかった
凍え死にしそうな精神の極北にさえ
ひとりでできることなんてなかった
嫌われたくないから嘘をついていた
煌めく水面を見つめているとそれがよく分かった
気持ちを吐き出してしまいたい
胸が熱いように痛かった
苦しかった
好きだと伝えれば
そこから自由になれそうな気がした
なまえをなんども声に出していた
せつなさに鋭く震えて
澱んだ青が白濁をこぼした
鈴の音がする
たましいの音に違いなかった
そんな耳鳴りがやまなかった
ひとりでできることなんかなかった
凍え死にしそうな精神の極北にさえ
ひとりでできることなんてなかった
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