『マルボロ/カフェテリア』/セキラボ!
『マルボロ/カフェテリア』
バイパス沿いのカフェテリア
男のくわえたマルボロから吹き出てくる白ひ煙
ごしに夜がゆつくりと幕をあけて、その向かふ
夕焼けを背負うように蒼ひプジョーが過ぎてゐく
カフェテリアの時計は午後6時を指してゐた
風の中に白濁としたものが混じつてゐる 昼 を想つている
カゲロヲだと想ふ
それはまぶたの奥で揺れてゐて
それは仄かに白ひ
それは
すぐに消ゑる
男はカゲロヲだと知りつつも
溺れてゐたかつた
空蝉のやうな眼で
時はうつうつとしてゐた
光化学スモッグの消え去つた夜空の下
でのことだ
犯されてしまつたことばが
脱皮しはじめて
置き去りにされたマルボロの遥か上空
夜空には白濁としたものが混じつている
男は
私は空だと想つてゐる
私は空だ空だと想つてゐる
私は空だ空だ空だと想つてゐる
そのシジマ、カゲロヲなのではないかと訝つて、ゐる
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