文字/
乱太郎
君がいくつもの言葉を
ひとつの親指で
文字で刻んでいく頃
僕のいくつもの淋しさが
ひとつの羽となって
冬の凍った湖に帰って行く
鳴いているかい
僕が人差し指でなぞった
吐息混じりの文字
眠らないでいるのかい
そう尋ねる僕は
矛盾を綴るのだが
君には送らない
地平線に影を落とす霞んだ文字
君と君のいない時間を
飛んでいる渡り鳥
君がまた親指を動かして
僕を訪ねてくれたなら
今度こそ
消してしまおう
さよなら
青白い傷だらけのはくちょうの文字
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