101個目のぬくもり/あ。
それは、手のひらでした
空気が冷たくて目が覚める朝
寝床から出るきっかけを作るために
ひとつ大きな伸びをした
ふと指先に感じたもの
腕の中でほんの少し身体をひねる
バランス、乱れる
思わず空をかいた拍子に
乾いたわたしの頬に触れる
湯気がのぼるココアのように
路傍に咲く名前も知らない花のように
芯から、
目を凝らしても見えない奥のほうから
やんわりと
ゆっくりと
あたためてくれるのは
小さな小さないとおしいきみの
小さな小さな爪の付いた
小さな小さな手のひらでした
閉じられた指をそっと開く
その中には。
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