ねむりのエレクトロニカ/否々
夏休みの音楽室
四階までかけあがって防音扉を開けた瞬間の熱気みたいな
背中を伝う汗はつららみたいにきもちよかった
あのね
グラウンドを行き交う少年たちの未熟で雄々しい掛け声よりもアンサンブルの音色にとろけた日々はね
夕焼けよりもピンク色でね
いつだってきみにとどいてほしかったんだ
バニラビーンズよりバニラオイルのほうがあまくなるきがするから
背伸びしてつま先がふるえるほどあまい旋律を弾いたの
でもね
借りたCDの内側にさよならをあざとくしのばせて
最後は不器用に笑ったんだったね
おとなになって人工的なねむりのそのむこうに見る夢はなくて
いつだって無機質なおはようが待っていて
朝日はいつもつめたかった
たおやかなぬくもりがいつかそこに宿ったとして
それに勝るものを
ねえ
きみはしっている?
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