上書き/寒雪
 


路上に倒れこんだ冬の夜
体の芯から冷やそうと吹きつける
荒々しい木枯らしにつられたのか
降りしきっていた雨は
いつの間にか雪に変わる
地上に降り立ち始めた
情け容赦のない雪は
若者が吐き出した
チューイングガムの黒さ
削られても粗いまま
ざらついたアスファルトの黒さ
見たくもない月夜の
死角に眠る暗闇の黒さを
白く柔らかく塗装していく


薄目を開けて見えた
ぼくの過去を写し取った
路地に漂う悲しみの狂おしさに
隠しておけなくなった心の襞を
何度も何度も嘔吐して
白くなった地面を紅く染める


止むことなく降り積もる雪が
吐き出したぼくの紅さを
白く上書きしてしていく
もうすぐ閉じてしまうだろう
力を失った瞳をこらして
その光景を見ようと頑張ってみる

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