人魚のミルク/冬野 凪
 
路地裏を抜けるとそこは黄昏の国


鮭の半身が海へ帰りたがつてゐる


今しがた刺身が自殺したと云ふ


亀を何匹積まれても此処は売らん


傷痕に潜むバクテリアいちやつくな


餃子を包む掌は水脹れ


ばーちゃんがばーちゃんであるために僕は走る


さりげなく後ろを見せた妻よ……


後ろ前反対にズボンわざと履く


舌のうへ蝶が止まりみぞれ鍋


人魚の母乳こそが海のミルク


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