雲/刑部憲暁
夕暮れてゆく空に
雲はただよう
見上げると
まるでこころのように
どんなかたちにも 見えない
どんないろにも 見えない
ただ流れて ゆれて 暮れて
なんてしんみりとしているだろう
振り子のように 動くすき間で
雲は
いきていた雲と
いきている雲だ
陽は ぐんぐん遠ざかり
しだいに うすぼんやりとしてきて
雲は
もうとてつもなく 遠いものになって
雲からも 遠ざかり
ゆれている いろをわすれて
ゆれている かたちをわすれて
ゆれている いつか見た
あの日の 遠い日の
たくさんの雲みたいに
ゆれている
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