ラストリゾート (海)/salco
拾うと、並べてみて
よく比べて考え、いちばん見劣るのを捨てた
母は
バスタオルを顔まで引き上げて寝ていた
赤いリボンが両側で侍るようにそよいでいた
紺碧の海原も周りの海水浴客も何ひとつ変わらない
呼びに行ったのは、それが怖くなって
泣き出してからだった
この、こみ上げる吐き気のような固まりを
母に取ってもらわなければならなかった
幼かった私と違い
以来、母は自分を許せなくなった
時々、わからなくなる
自分が鼾に耳を澄ませ、怯えるのは母が
あのすえた独房から兄の元へ旅立ってしまうと
服役の代行者を失うからではないのかと
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