ラストリゾート (海)/salco
 
せずわたしは
隣室や台所で鼾に耳を澄ませている
つと止まってしまうのではと怯える


人並みだったのだ
十四年前の夏、三年生の兄と
幼稚園の年長だった私を連れて伊豆に行った時
父はドゥバイに出張中だった
「こっちは暑過ぎて、海はねぇ、見るだけでいいや」
電話で言っていた
「今度はパパも一緒に行くからな
じゃあね、ママの言うこと聞くんだよ」

ひと通り海水で遊び、冷えた体を拭いた後
母は
「もう海に入っちゃだめよ、入りたい時は必ず
ママを呼びなさい」
厳命し、ビーチパラソルの下にいた
左右に目印の赤いリボンが一本ずつ垂れ下がる
その傍らで、兄と私は砂山を作って
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