王の突起物/シリ・カゲル
 
官間もない片腕のベルベル人が
盗んだバイクで走り出す
眠れない夜を抱いて。
野ざらしになったパーカーの背中部分で
“ハワイとオスロはどちらが良い画数か„
表面にアイロン転写された国籍不明の英語が湿る。
ふつつかな娘ではございますが、正体は突起物。
ヘリンボーン柄の突起物。
報復人事で突起物。
マグレブの姫を娶ることになって、王は
見えそうで見えない部分に税を課し
無視してこれを逃れようとする反対派には
目には目を式の同害報復刑をもって
盲目の姫に無上の愛を捧げるのだ。
やらしいバイクで走り出す
優柔不断の夜に
夜を抱いて。ねえ、抱いて。
ラングドシャを焼き上げる薫り
理論値から導き出された外れ籤
ルームメイトの置いていった石油ストーブ
劣等感が部屋を満たしていく
老朽化著しい、ふたりの部屋に。
わたし、と、あなた
をつなぐ突起物。
ん…色っぽい。
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